現在M2で春からD1となるかせがおです。 博士進学するにあたって金策を考えていると、もっと事前に考えておかなければならなかったなという気持ちになってきたので、これから博士進学を考えている学生に少しでも役に立てばと思いまとめます。

これを読んでいる方はご存じかもしれませんが、大学院生はともかくお金がありません。 研究もしなければいけませんが、その前に生存をしなければなりません。 生存には莫大なコストがかかるので、金策は早め早めに考えておく必要があるなと痛感しています。

必要な手取りを考える

金策を考えるにあたって、始めに考えなければならないことは、最低限死守しなければならない手取りの下限です。 例として、都内一人暮らし大学生の場合を考えてみます。

例. 都内一人暮らし院生の場合

項目 金額(円/月)
学費* 50,000
家賃+交通費 80,000
水道光熱通信費 15,000
食費 50,000
書籍費 15,000
合計 210,000

※学費は免除される可能性はありますが、保証はないので考慮しなければなりません。

人によって振れ幅あると思いますが、だいたいこの程度だと思います。 食費関しては毎食自炊のような丁寧な暮らしをすれば抑えられるでしょうが、高々1-2万円程度の効果しかないので、趣味でもない限りはその時間を研究なり労働なりに使った方がよいと思います。 反対に交際費等を考慮すれば、これでは足りないかもしれません。

必要な収入を考える

最低限毎月21万円の手取り死守しなければならないことが分かったので、これをもとに必要な収入を考えます。

1)全て労働で賄った場合

月の給与が額面で25万円だったとします。 このとき年収は300万円で、国民年金と国民健康保険料が合わせて年間約40万円ぐらいでしょうか。 そうすると基礎控除や社会保険料控除等を加味して所得税を計算すると、年間の所得税が約6万円ちょっとぐらいになると思います。 この条件で月当たりの手取りを考えると、所得税と社会保険料と住民税が合わせて(少々多めに見積もって)月約5万円ぐらいなので、手取りは20万円ということになります。

ちょっと足りませんね。 本を買うのは我慢しましょうか。 そしてこれを特定の月だけでなく毎月達成しなければなりません。 学業の片手間で労働をして、毎月安定して25万円稼ぐというのはなかなかに大変です。

安定した収入を得る方法として現実的なのは、以下の二つのどちらかだと思います。

  1. 常勤の労働者になる。
  2. 国際卓越大学院教育プログラム(WINGS)RA・日本学術振興会特別研究員(DC)になる。

前者については、最低でも週当たり30時間程度の稼働を求められるでしょうから、研究との両立はなかなか難しいと思います。 社会人博士とやっていることは変わらないので、標準年限ではなく始めから5年程度で卒業することを考えることになるかもしれません。 ただ、そんなことをするぐらいなら早く卒業してしまって、フルタイムの収入を得た方がよいのではないかと個人的には思います。

となると現実的なのはやはり後者かと思います。 知らない方のために補足しておくと、WINGSというのは博士進学を確約する代わりに修士課程の間からお給料がもらえるというものです。 東京大学には2023年3月16日時点で18のプログラムが設けられています。 支給期間や支給額はプログラムによって異なりますが、例えば私の所属するWINGS-PESでは修士課程の後期(10月)から毎月18万円支給されます。 WINGSに採択されると毎年必ず学振に応募する必要があり、DCになると同時に卓越RAをやめる必要があります(給与の併給は認められていません)。 卓越も学振ももちろん審査はありますが、学振であっても倍率はおよそ5倍程度なので、大人気企業に就職するよりは簡単だと思います(異論は認めます)。 学振を取ると採用年度の4月から毎月20万円支給されます。 一方で、いずれにしてもこれ単体だとたりないので、追加の収入が必要です。 週当たり10から20時間程度労働することになるかとは思います。

2)全てJASSOで賄った場合

JASSOの貸与型奨学金の詳細は公式ページをよく読んでください。 修士課程の場合、JASSOは第一種奨学金が最高で88,000円、第二種奨学金が150,000円まで借りられます。 博士課程の場合は、第一種奨学金が最高で122,000円、第二種奨学金が150,000円まで借りられます。 家計次第ですが、第一種と第二種を併用することも可能です。 そうすると、修士課程で最大238,000円、博士課程で最大272,000円借りることができます。

貸与型奨学金は収入ではないので、真に奨学金だけなら年間所得は0円ということになります。 当然ですが所得税は0円です。 年金の学生納付特例制度も問題なく有効でしょう。 また、おそらく住民税非課税世帯に該当するでしょうから、国保の減額も期待できます。 つまり、貸与される金額ほぼ全額が手取りと考えてしまって問題ないと思われます。

仮に修士から博士の5年間で常に上記の満額借りたとします。 この場合、第一種奨学金が総額約650万円、第二種奨学金が総額900万円借りることになります。 これを貸与利率0.369%の下、20年間定額返還方式で返還した場合でも、月の返還金額は約66,000円です。 ちゃんと就職していれば払えない額ではないでしょう。 さらには「特に優れた業績による返還免除」によって、返還が免除される可能性もあります。 (審査に通るかはさておき)借りない手はないですね。

3)労働と奨学金のハイブリッド

1)および2)はいずれも極端な例でしたが、通常はその併用が多いかと思います。
※ただし、学振とJASSOの併用は認められていません。また、最近風のうわさでJST次世代とJASSOの併給ができなくなるような話を耳にしました(公式の告知待ち)。

また、JASSOに限らず民間の奨学金もありますし、貸与型だけでなく給付型奨学金もあります。 一方で、いずれの奨学金も採用される保証や、(一年更新の場合)更新される保証はないので、あまり奨学金に頼りすぎる設計というのは危険だと感じます。 できることならなるべく保証された収入で大部分を賄えると安心ですね。 もっとも、それができれば始めから苦労はしていないのですが。

最後に

金策は早め早めに考えておいた方が良いです。 でないと私のように4月を目前にして頭を抱える羽目になります。 これをまとめていて思ったのですが、実は学振なんて取らずにJASSOで満額借りた方が余計な心配をせずに済んだのではないかという思いすらあります。 もちろん学振の場合、生活費だけでなく研究費もでるのですが、それを気にするぐらいなら始めから巨大研究費を持った研究室に行けばよいと思います。 真に金がなくなったらアカデミアを去るだけの話ではなりますが、できることなら最後まで卒業したいですね。

「D進は計画的に!」ですね☆